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 歌舞伎好きのカミさんに連れられて、年数回歌舞伎を観るようになって数年。台詞や話の筋やらがさっぱりわからず、筋書きから目が離せずまともに舞台を観られなかった状態からようやく脱却し、スムーズに歌舞伎を楽しめるようになってきた。近頃は演目を観て、今回は筋書きなしでOKかなと判断できるようになった。
 今月歌舞伎座にかかっている十二月大歌舞伎の演目も、「操り三番叟」「野崎村」「身替座禅」という定番中の定番で、はじめは筋書きなしで行けるかなと思いそのまま席に直行したが、ふと考えると一本全く筋の読めない新作があることに気づき、勘太郎の「操り三番叟」が終わったのを見計らって、あわてて筋書きを買いに走った。
 筋書きの読めない新作、それが今いろいろな意味で話題の宮藤官九郎作「大江戸りびんぐでっど」だった。

 結論から書く。クドカンの「大江戸りびんぐでっど」は面白かった。これも「ちゃんと歌舞伎」であると思ったし、かつ観る者を試す内容になっていて、刺激的でもあった。誤解を恐れずに言ってしまえば、話の筋がきちんとしてないだとか内容が下品だとか派遣労働者を貶めているだとかいうのは、それぞれの一面を言い当てているかもしれないが、この演目の全体を表することにはならない。むしろ、そういうそれぞれの「批判」が、この芝居を観た者本人が気づいていない「意識」をあぶり出しているかも、とさえ思えるほど、今の世相の風刺になっている。そういう点で、クドカンのセンスはいいなあと思ったのだった。

 「りびんぐでっど」とは生ける屍のこと。伊豆諸島は新島名産のくさや汁をかぶってよみがえった死人達が江戸へ上陸。生きている人間を食べて次々「ぞんび」にするのに手を焼いたお上に、同じく新島出身の半助が「死なない(既に死んでいる)」「飯がいらない」「おとなしくて手間のかからない」「安くこき使える」働き手として使うことを提案、「はけん」と名付けてその元締めになるというのが話のはじめで、それで次々起こる騒動を描いたものだ。

 感心したのは、生ける屍=「そんび」を「はけん」=派遣労働者と見立てたこと。この点に嫌悪感を覚える人も多数いると思うが、これが無ければこの芝居はなりたたないぐらいに重要な点である。これがなければ、私は松竹とクドカンと勘三郎丈に「金返せ」といってしまう。
 なぜそう思うか。

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 ここまであからさまに「天下り」されると、なんと言いますか、心底あきれてしまいます。
 生活できない賃金で働かざるを得ない人々を大量に生み出すことにつながった2004年の改正労働者派遣法の成立に深く関わった竹中平蔵氏。この法改正で実施された製造業への派遣解禁により、派遣業界が大いに活性化したことは周知の通り。
 その竹中氏が、よりによって派遣業界トップクラスのパソナグループの会長に納まるという。しかも就任は総選挙の結果が出る直前の8月26日だそうです。

 ネタなのか本気なのか、それとも開き直りなのかと、つい余計な詮索をしてしまうぐらいの「天下り」劇。ただの天下りでないのは、東京新聞9月8日付「こちら特報部 ニュースの追跡」(画像)を参照いただければ一目瞭然です。一言で言えば、権力を使って口入れ屋(手配屋?)を大きく育て、頃合いを見計らってそこの親玉に収まり「果実の収穫」に入るということになりますね。自分の資金で投資したならばいざ知らず、閣僚として育成に努めた産業で、自らの懐は痛めずにもうけようというのだから、恥知らずも良いところでしょう。

“派遣労組”きょう結成 from 東京新聞 2004.5.15

 地域労組の役員をやっていることもあって、いわゆる非正規雇用労働者のことは関心事の一つになっている。

 派遣社員中心の労働組合が結成された。連合傘下の「UIゼンセン同盟人材サービスゼネラルユニオン」がそれで、派遣業界を横断する労組の結成は初めてだそうだ。
 派遣社員やパート・アルバイトなどの非正規雇用労働者は、正社員の代わりとして、雇用する企業側にとって極めて都合よく使われる存在なだけに、これまでもさまざまな労働問題が起きていた。労組側として何らかの対応が求められていただけに、「やっとできたか」という思いがある。

トヨタ、一時金満額回答へ 労組のベア要求見送りを評価 from 朝日新聞 2004.2.25

 過去最高の利益をあげた会社に対し、要求を手控えた「ご褒美」なんですかね。
 すっかり手なずけられとるなあ。労組の組織率が下がるのも当然かも。

Asahi.comに「日産労連は異例のベア要求へ」なんて記事が載っていたけど、賃上げ要求を「異例」などと書くのは、いったいこの記事の記者は誰のために書いているのかねぇ。
 まあ、多くの大手労働組合は、これまで賃上げ要求を控えてきたから、久しぶりの「賃上げ要求」が異例に映ったのかもしれない。
 しかしまあ、労働組合もなめられたものよ。賃上げを「異例」などと書かれてしまうのだから。しかも朝日に。
 まだしばらくは、働く人間に日の当たることは少ないだろうなあ。今年も。あ?あ。

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