なんだかなあ、の続き

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 別に怒ってやしませんて。しょーがねーなーって思っているぐらいです。はい。
 テキストによるコミュニケーションは、どのように注意して文章を書いたとしても、受け取り手の気分感情思想信条などによって、同じ文章が全くちがうイメージで受け取られることのほうが圧倒的に多いですし。

 さて。だいぢろ氏からまたTB来ました。
 たぶん噛み合わないだろうなと思ってましたが、その通りになりましたね。
 まあ、いろんなコトをご存じのようで、長々とご高説を開陳されておりましたが、ご自身の思い込みの中でひとり遊びをしている、という印象を受けました。最後のほうで「強すぎるイデオロギー云々」とおっしゃっておりますが、「とにかく何が何でも反対する。」とか「朝日新聞のお家芸」とか・・・十分「イデオロギー」に染まっていらっしゃると思いますが。といってもどうしてそう言われるわからないでしょうね、きっと。そんな風に感じました。

 だいぢろ氏と私との基本的な違いといえば、主体性の基盤として国家に重きを置くか個に重きを置くか、という点だと思いました。だいぢろ氏はもちろん国家ですね。「国際社会にいれば否応なしに日本のイメージは日本人である私個人にダブらされます。」と言われている点からもそれは明らかでしょう。
 私は、国家は必要悪程度に捉えておいた方がよい、できるだけ批判的に見ていた方が長い目で見て損はしないと考えているクチです。平たく言えば、国家なんぞ放っておくとロクなことをしない(米ブッシュジュニア政権がいい例ですね)と思っているもので、だから政府に批判的な意見がどうしても多くなるのは致し方ないところです。だけど国がやることにはすべて反対なんてしてませんよ。ちょっと前の日朝首脳会談など「小泉よく決断した」とほめたくらいですから。いまでもあの会談はやってよかったと思ってますし。この問題のその後の展開は眼を覆うばかりだけど。

 靖国の話は、よく調べられていていますなあと感心しました。経過の解釈は別にして、だいたいは知ってますが、視点が違うとこれほどまでに評価も変わるんだなと思いました。いい勉強になりました。
 また神道についておっしゃりたいことはよくわかりました。神道が宗教かどうか緒論があるなどということは知りませんでしたが、神道が日本の歴史と関係があるだろうということぐらいはわかります。日本人の生活や意識にどれほどの影響があるかについてはたぶん意見が違うでしょうが、「神を崇めるのか、あるいは戦死者を弔うのか、宗教なのか、生活様式なのか、非常に曖昧なのです。」と言う点も、そういう見方もあるという形で理解できます。その点については、今後もいろいろと調べたり議論したりしていけばいいと思います。

 でも、私が指摘したのは、靖国神社という特定の一宗教法人(これには「主観」の入り込む余地はありませんね)に、なぜ無宗教、他宗教の戦没者まで合祀されなければならないのか?ということです。靖国神社という存在は曖昧ではありません。レッキとした一宗教法人です。そこに、無宗教も他宗教も一緒くたにして合祀することの合理性がさっぱりわからないのです。
 靖国神社という特定の一宗教法人を神道一般のことに置き換えて(すり替えて?)、靖国神社が宗教かどうか曖昧かのような論議をしようとしても、それは通用しないと思います。百歩譲って神道が生活様式だとしても、靖国神社は、それ自体神道という宗教に所属する宗教法人です。
 だから私は、先の記事で「靖国に合祀されている戦没者の中には、神道以外の宗教者も含まれている。戦没者当人が信じているのとは違う宗教に「軍神」として合祀するのは、これこそ死者への冒涜にほかならない。」と書きました。他宗教の人が、信じているのとは違う宗教で弔われるなんぞ、「死者への弔い」を大事にするだいぢろ氏にとっては我慢ならないことだと思うのですが。

 さらには、繰り返しになりますけど、だいぢろ氏は先の大戦を「国民戦争」と定義しました(私はこれには全く同意できませんが)。「日本人全員に責任がある」とも書きました。そして「人間は死者を弔うもの」とも書きました。そういう話の流れから、私は日中戦争・太平洋戦争の日本人戦没者は約310万人だけど、靖国には全員合祀されていない。だいぢろ氏の主張に沿って考えれば全員が合祀されなければおかしいんじゃないの?という指摘をしました。だいぢろ氏が「国を思って死んでいった人たち」をきちんと弔うべきと言う以上、そうあって然るべきなのに、靖国の合祀の実態はそうなっていない。「死者を大事に」と言いながら、一方で靖国の戦没者の扱いの不公平をどう見ているのか。明らかにダブルスタンダードではないか。それで、「どの面下げて」となるのです。
 都合のいい部分だけ切り取って「この面です」など言うのは、ちゃんと文章を読めないか意図的に話をそらしているかのどちらかですね。意識的か無意識的かは知りませんが、印象操作はやめていただきたいものです。

 史観のこともそうです。だいぢろ氏は「我が国の歴史認識はこうだ。貴国がこれと違うというのであれば遺憾ではあるがやむを得ない。我が国は我が国の歴史・文化に基づきこれを行う」と書きました。その前段として、「A級戦犯は存在しない」とか「『侵略戦争』とは言わないなど、ご自身の史観について具体的な言及がされております。
 これを自然に読めば、「あれは国民戦争であって侵略ではない。そうだという立場は変えられない」というように読むことができます。そして「それについて違うというならやむを得ない。今後もこの立場でやっていく」と言い、それを「自分たちの史観としてはっきり主張したらよい」とおっしゃっていました。
 ずいぶん身勝手な言い分だなと思いますが、こんな主張を聞かされた中国・韓国・朝鮮・東南アジアの諸国の人々(特に先の大戦を知っている人たち)には、ああやって受け取られますよという意味で「強盗殺人」のたとえを書いたのです。
 ちゃんと一連のやりとりをたどっていけば、なぜああいう書き方になったかの意味は、読む人にはわかっていただけるかと思いますが、ここでもだいぢろ氏は都合のいい部分だけ切り取って、あたかも私が極悪非道の決めつけを行っているかのように書き連ねております。
 いくらあなたの気に入らない話だからって、都合のいい部分だけ切り取って意見するのはルール違反だと思いますが。

 だいたい「国を思って国のために死んでいった人」が、武器をもって集団で押しかけていった先(他国)で一体何をしたか。「殺人強盗」の表現では足りないぐらいのことをしてきたのですよ。これはだいぢろ氏がどう思おうと事実です。かつての日本軍が攻めていったところを訪ねれば、いくらでも証拠は見つかります。個人が隣家に押し入って住人を殺した上財産を強奪すれば、立派な犯罪です。たとえその個人が「自分の家族を思い家族のためにやった」といったところで、それは「身勝手な論理」として非難され犯罪として裁かれるのは当然です。それが国家の場合には違うことになるのは変ですね。「国を思い国のためにやった」としても、やられた方にしてみればその実態は「集団的な殺人強盗」です。
 先の大戦で日本人はそういうことをしてきたのです。たとえ「思い」が純粋だったとしても、実際にやってきたことの結果を正面から真摯に受け止めて絶対的に反省をし、それを受け継いでいかない限り、だいぢろ氏言うところの「内政干渉」は増えこそすれ減ることはないでしょう。やったことの反省も出来ない無責任な国家と国民というレッテルが、「自分たちの作る社会や文化を代表している」ことになってしまいますよ。

 ようするに、私が出した疑問やら意見にはまともに応えず、自身の思い込みで勝手にレッテルをはりつけて「だからこんなヤツらはダメなんだ」とおとしめておいて、こちらが出した意見は無視して自説を延々と開陳し、揚げ句自分に都合のいい部分だけ取り出して相手を非難する。今度の氏のTBはそれだけのモノだったってことです。

 以下ひとりごと。
 国家の主体性=自分の主体性という思考からは、国家のやることを批判することはそのまま自分に対する批判になる。だから批判と誹謗中傷の区別がつかず、全部ごちゃまぜにして「国に反対するやつはダメ」という極めて単純な思考パターンに陥るんでしょう。国家が他国から批判されて姿勢を変えること自体が許せなくなるのがよくわかります。自分の主張に自信を持っているなら堂々とそれを展開して論を闘わせればいい。でも国家=自分であって、その国家が情けない状態だと自分も情けないことになって、自信を持ちきれない。だから、反対者に自分の思い込みで「レッテル」を張りつけておとしめることで、自分の相対的な立場を高めようとする。まさにその典型でしたな。
 「反国家」の定義など、それをみごとに反映している。「この人たちは始めにイデオロギーありきなので、冷静な物の見方ができない」「とにかく何が何でも反対する」。国家のやることならすべて反対・・・国家に批判する人たちを「サヨク」「朝日」「反国家」とすべて一律に「反対」する・・・笑っちゃうぐらいマッチしてますな。まさに「手段が目的化してしまって、さもありなんというところです」。

 「私は(中略)『こいつらにはプライドも主体性もないのか』なんて思われるのは大変苦痛です」って、本当に国家の傷が自分の傷になっちゃうんだね。国家におんぶだっこされなきゃ主体性が持てないのかな。誰か忘れたけどある評論家の言葉を思い出した。
 「国家に『誇り』をもたせてもらおうなんて思うなよ」。

 ということでこの話はこれでおしまい。すっかり長くなっちゃったな。

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