「牛丼」消滅で考える食糧安保

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 遅くとも2月下旬までには大手チェーンの店頭から牛丼が姿を消す、というので、各メディアがその動向を取り上げている(たとえば、牛丼:迫るXデー 底つく在庫、「安い」「早い」の行方は? from 毎日新聞 2004.1.31 など)。
 その取り上げ方といえば、看板の「牛丼」というメニューを失う各社がどのような対応をしているかということが中心で、中には日本の近代的ファストフードの草分けがなくなると惜しむ論調で報道するテレビもあったりする。アメリカ産の安い牛肉が入ってこなくなったことで、「早くて安くてうまい、庶民の味方」の牛丼が、今後どうなっていくかを、メディア全体で心配しているように見える。

 でもこの問題には、食料自給率が極端に低いこの国の、何かあったときの食料確保という点で、根本的な弱点が明らかになったという側面があることを指摘する報道をほとんど見ていない。カロリーベースでの食糧自給率が5割を下まわる日本は、世界でも有数の食糧輸入大国だが、その食糧輸入がストップした時にどういうことが起きるか。それを端的に示したのが今回のアメリカ牛BSE発生事件事件ではなかったかと思う。

 一品目が輸入停止になったところで、食糧事情にたいした影響は出ない、という声も聞こえてきそうだ。だが、今回は牛肉に続いて鳥肉も、鳥インフルエンザの流行によって主要輸入先からの輸入が停止になり、多重的にさまざまな食物の輸入がストップすることがありうることを示した格好になった。国民の生命にかかわる食糧の問題が、コストと効率の面でのみ判断され、どんどん輸入が拡大されてきたことに対する警告と思うのだがどうだろうか。

 現代は、いつ何時何が起こるかわからない不安定な情勢にある。アメリカ政権は、そう言ってアフガンとイラクで相次いで戦争を起こした。そして日本政府は、そうだそのとおり、日本のまわりにもいつ何をするかわからない連中(=北朝鮮?)が居ると言って、日本の安全保障に重要であると、イラクに自衛隊を「派遣」した。
 しかし、国際社会の反対を振り切って始められたイラク戦争は、その最大の根拠とされた「大量破壊兵器」が、開戦時にはほぼ存在しなかったことが確定的になり、正当性そのものが失われつつある。
 それでも「安全保障」を口実にイラクへ自衛隊を送ると決めてしまった日本政府は、一方で、自衛隊よりも国民の生命の安全保障に直結する食糧の問題、特に自給率の回復(自分の国で食糧をまかなえるようにすること)については、いまだに対策を取ろうとしない。それこそ食糧については、地球環境破壊が世界的に進行していることもあって、いつ世界的に食糧が不足に転じてもおかしくない情勢にある。それこそ政府がいつも「不安定な世界情勢」と口にするように。
 つねづね政府が言う「安全保障」がいったい誰のためのモノか、少なくとも一般の国民のためではないことをわかりやすく浮き彫りにしたのが、今回のアメリカ牛肉BSE事件だったと言えるのではないだろうか。

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